学生ヘルパーの門出を祝して

 3月に入り、別れのシーズンの到来だ。

 ひだまりでも、約2年前、ゲストスピーチをきっかけに、重度訪問介護従事者養成研修を受講し、ヘルパーとして活躍してくれた3名の学生が、このたび卒業を迎え、春から新たな門出へと旅立つことになった。今回は、そんな3名の中から1名の女子学生にスポットを当て綴っていきたい。

 愛媛県から静岡の大学へ通い始めたAさん。私が彼女に最初に抱いた印象は、少し照れ屋。特に目立つということはなかったが、後日、彼女から届いたゲストスピーチの感想文に目が留まった。

 —いろいろあって現在は介護分野で学んでいるが、元々特別支援教育に興味があり、障害分野に携わることができたらと思っていた。今回の話を聞いて改めて将来は障害分野に携わろう!と決意した—

 嬉しい一文だった。

 彼女がひだまりでヘルパーとして働きたい、と連絡をくれたのは、それから間もなくのこと。これまで知的障害がある方と関わりがあったということで、その経験を活かし、知的障害の方の移動支援をメインで依頼をはじめた。物腰が柔らかな彼女は、すぐに利用者の方々と打ち解けることができ、安心して仕事を任せることができた。仕事と学業の両立は決して楽なことではなかったと思うが、約2年間真面目に働いてくれた。

 卒業が間近に迫ったある日、これまでのお礼を兼ねて事務所へ挨拶に伺いたい、と彼女から連絡があった。時を同じくして、ひだまりに母親の緊急入院に伴い、当法人が管理する体験室で10日ほどヘルパーと一緒に宿泊できないか、という重度の身体障害がある女性からの依頼が飛び込んできたのだ。緊急事態に加え、ヘルパー不足のなか、どうしたらいいのだろう…真っ先に頭に浮かんだのはAさんのことだった。

 しかし、彼女は前述のとおり、これまで移動支援がメインで身体介護の経験は数回程度しかない。そのような状況下で、今回の依頼を引き受けてくれるのだろうか…

ダメ元で声を掛けると、「できる限りやらせていただきます!」という前向きな返答があった。

 3月初旬、緊急事態のため、たった一度の研修を了え、翌日からさっそくひとりで支援をお願いしなければならないスケジュールだった。本来は、ひとりで支援に入れるまでメインのヘルパーの元で何回か研修を行う。いくら緊急事態とはいえ、さすがに一度の研修では彼女も不安だろうと数回の研修を促した。しかし、彼女からは一度の研修でだいたいのケア内容は把握できた、安全に気をつけるので一人で任せてもらえないか、との返答があったのだ。一見、おとなしそうな彼女の雰囲気とは裏腹に、思いがけない強く前向きな気持ちに私は驚いた。不安はあったものの、彼女の力を信じて翌日から支援を任せた。はじめのうちは、双方が不安を抱えながらの体験室での生活だったに違いない。慣れない介助で戸惑ったことも多かったはずだ。利用者側も不慣れなため、うまく介助指示ができず、予定していた終了時間より大幅に延長してしまった日もあった。しかし、日に日に双方の信頼関係が増していき、介助のコツなども掴めてきたようで、ひとつひとつのケアがスムーズに行えるようになってきた。宿泊期間の中盤には、ケア時間にゆとりが持て、予定していたケア以外のこともお願いできるようになった、と利用者の方から喜びの報告があった。そして、宿泊期間を無事に過ごすことができたのだ。安堵した。

 

 今回、急な依頼にも関わらず、快く支援を引き受けてくれた彼女には感謝しかない。この春から、彼女は実習先として好印象だったという社会福祉法人に就職が決まったそうだ。配属先は障害者の入所施設とのこと。今回のひだまりでの身体介護の経験が就職先で役立ってくれたら嬉しい。

 そして、今回卒業する3名の学生には、ひだまりでの経験を胸に自信を持って社会へ飛び立っていってもらいたい。学生たちが自分の選んだ道で光輝いてくれることを心から願っている。

最後に、みんな、本当にありがとう!

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